2011年10月12日水曜日

妄想MENU②そいつは、おめで鯛

たしか、江戸時代の「草子」ものだったかと記憶しているが、
高校の古文で習った、鯛にまつわる話が印象に残っている。

ある大店では、正月のごちそうに大きな鯛を一匹注文していた。
その鯛は、大旦那とその家族がいちばん良い部位を刺身にして食し、
番頭、手代と店での身分が下るごとに
食べられる鯛の部位も料理も下ることになっており、
最下の丁稚にも尻尾をつかった鯛のアラ汁が与えられた・・・云々、という内容だった。
この大鯛は、大相撲の優勝力士や恵比寿様がもっている
体長1メートル位の真鯛のことである。

しかしこの話をきいたとき、頭に浮かんだのは、我が家の食卓にしばしば登場する
小骨のがっしりした小鯛だった。
「えー、おろしたら食べにくいのに」と思わず漏らした私に、
同級生のK子が言った。

K子  「え? あんたんとこ、鯛は尾頭ごと食べるん?」
灯馬 「うん、そうだけど」
K子  「すごいな。まさか1人1匹じゃないよね」
灯馬 「うん。とにかく骨が多くてあんまり好きじゃないけど。
    こないだも残しておこられちゃったよ」
K子  「えー? すごいな。ウチなんか鯛なんてお正月もでないよ」
灯馬 「え、そう? 塩焼きだけどときどきでるよ」
K子  「えー? すごいな。普段から鯛食べてんの。すごいな」

さすがにここまで話すと、こりゃちょっと違う鯛の話ではないかと不安になった。
帰宅して母に話すと障子がびりびり破れるくらいに大笑い。
「ばかだね。それは真鯛。ウチで食べているのはこれ」と鮒のような小鯛を見せられた。

以来、実家で正月になるときまって登場する小噺だ。
たしかに、真鯛とくらべると体長20センチの小鯛は金魚みたいなものではある。

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